マタハラNetダイバーシティ企業インタビュー 第1回「株式会社サイボウズ」~前編~
――会社の問題を解決すればマタハラも解決できる!?
忙しい職場で部下が妊娠したら!
中根 サイボウズではどの部署も人手不足ですので、退職休職がある場合は対応が必要な職場がほとんどです。だからこそ、「是非復帰してほしい!」と発想しています。人手不足は、実は復帰しやすい環境だとも言えますね。
実際に妊娠してからは、たとえば、つわりがあまりにひどい時は、休職することも可能ですし、在宅ワークや、時間をずらして働く等、できるだけ柔軟に対応しています。
中根 時間管理をする人もいれば、裁量労働のメンバーもいます。時間管理スタイルは人によって異なります。残業や深夜手当が発生する場合は、在宅ワークであってももちろん報告するように言っていますが、正直、その都度深夜の勤務の許可を出していると働きづらいという意見もあります。本人の希望に基づくことを前提に、法律も柔軟に対応できるように検討してほしいなと思いますね。
人によって生産性の上がる働き方は異なるので、個人の希望に対応できるのが理想的だと考えています。
もちろん、事前に申請して深夜労働する人もいます。サイボウズはクラウドサービスを提供しているので、メンテナンスはそのような時間になりますし、夜中であってもトラブルなどで仕事が生じたときも、深夜勤務や残業で対応してくれるメンバーがいます。対応しやすいように在宅での対応も可能にしています。
サイボウズ式 その1「時間も場所も自由=九つの働き方」
中根 そうです。縦軸と横軸は、時間と場所の分類です。この表の中から、ふだん働きたい該当箇所はどこか選択して、宣言してもらっています。9分類といっても中身はいろいろなので、具体的に教えてもらうようにしています。たとえば、「9時から5時半の勤務時間を基本にします。ただし、仕事が残っていたら、多少自宅での仕事をします」という形ですね。
こうすることで、チーム全体が本人の希望を把握でき、仕事の割り当てがやりやすくなります。ちなみにサイボウズのなかで多い働き方はA1です。平均年齢が33.8歳と若く、ワークを重視するひとは多いです。
このように普段選択している働き方から、一時的に違う働き方をします、というのが、「ウルトラワーク」です。たとえば、歯医者の予定を入れたい場合に、丸1日休みを取るのは非効率です。1時間で治療を済ませて、それ以外の時間は家で働くようにする。それがウルトラワークです。
このとき、「今日はウルトラワークします」と公開スケジュール上で連絡し、上司が確認したうえで実施します。公開スケジュールなのでチームメンバーも把握できます。連絡はできるようにしてもらっています。
働きやすい環境づくりのポイントは、短時間であっても、場所が在宅であっても、性別や家庭環境とはまったく関係なくワークスタイルを選べることではないでしょうか。
中根 個人によってそのスキルや働き方も異なるので、すべての状態をグラフ化するかは極めて困難です。さらに市場は変化しますので、毎年議論をしながら個別給与を決定しています、
サイボウズの給料の決定軸は、大きくふたつあります。
ひとつは、市場価値を指標にしていることです。ごく簡単に言うと、「いくらで転職できるか」分析しているということですね。
給与は成果や貢献度に応じた利益分配であるべきなので、年齢や勤務年数等とは関係ありません。市場価値が非常に高い人はそれにみあった報酬にするべきで、人材が流出するリスクもあります。
■信頼度で絞り込む!
中根 もうひとつは、社内の信頼度という指標です。
さきほどの市場価値は、市場需給なので幅があります。転職市場では、ほとんどの場合、A社なら500万、B社なら400万と幅があります。それをさらに絞り込むイメージで、社内信頼度で評価しています。
この社内の信頼度は、「action5+1」で測ることにしています。これは、次の5つのアクションスキルをあらわしています。
1 | あくなき探究 |
2 | 心を動かす |
3 | 知識を増やす |
4 | 不屈の心体 |
5 | 理想への共感 |
これらを評価対象にしています。
理想への共感というのは、たとえば、サイボウズというチームが掲げる理想にいかに共感し、自分のリソースを投下するかということです。
ですので、働く時間や場所、つまりその人の働き方も給与に関係します。
我々はこれに加えて、「プラス1=公明正大」を重視しています。チームで仕事をする以上、お互い信頼関係が必要です。その基礎となるのが、公明正大であると考えています。
中根 評価の目的はふたつあります。
ひとつは、その人を成長を助けるための評価。
人によって成長の速度は違います。ゆっくりこつこつ成長する人もいれば急カーブを描く人もいます。成長にあわせた評価が必要です。「よく頑張った」と褒めるのが効果的な人もいれば、反対に「よく頑張っているんだけど、もっと頑張れよ」と言ったほうが成長する人もいます。
こういった人を伸ばすための評価方法がひとつです。この成長評価は、人事も関与することもありますが、直接マネージャーが行うのが基本です。
もうひとつが前述のとおり、給与を決定するための評価です。
「市場価値に乖離してきているので給与を見直したほうがいいと感じる」というようなコメントや、「信頼度が上がっています」といったコメントを部長らが提出して、それを人事が確認します。確認した後、評定会議で最終的に決定します。
中根 いえ、360度評価ではありません。成長評価については、基本的には評価した上司のコメントを重視しています。市場価値について、人事は中途エントリー者のデータを常に見ていますし、あらゆる市場のデータをチェックしているので、おおよその市場価値の幅はわかります。
中根 研修等は随時やっていますが、まだまだ改善しなければいけないな、と思うところはたくさんあります。評価されるプロセスはオープンにしています。
ここでのポイントは、評価をすべて具体的に点数化しすぎる、ということはしないようにすることです。
全部合わせて85点だから何評価で、それでいくら上がるというのが多いと思いますが、サイボウズは信頼度を測るという部分は定性的なデータで考えることが多いです。定量的なものは市場価値ぐらいですね。
このスキルに対してはこれぐらいの評価になる、という対応関係は、あいまいな部分を残しています。厳密に数値化、定義化しようとして失敗したことがありました。
このポジションの人はこれができるべきだといった要素をすべて書き出して細かい段階に分けたことがあったのですが、細かすぎて当てはまらない。しかも条件に該当して700万もらうことになった人の成果が見合っているかというと必ずしもそうではない。かたや、あるスーパーパフォーマーの一部のスキルが突出していて項目には当てはまらないが市場価値という面では高いから給与は上げるべき、という状況もあって評価を数値化したり、共通基準を細かく可視化することはやめました。
評価の基準に、このaction5+1を使っているということですが、これは表があってそれに書き込み、上司のコメントなどのフィードバックを本人に見せながら行うのですか?
中根 そんなイメージです。サイボウズでは半期に一回、振り返り面談をやります。期初にその人のミッションが決まります。途中で変わる場合も多いですが。
これを達成するために、上司と本人が一緒に打ち合わせながら、必要な行動や身に着けるべき知識を相談して決め、改善目標を明らかにしておきます。それを半期の後に振り返るわけです。後者が成長のための評価ですね。
―― ワークスタイルが問題になる企業は、フィードバックもなく、役員会議で部署ごとに2次評価が決められてしまい、どんなに1次評価があっても結局修正されます。その点、サイボウズさんはまさに公明正大ですね
後半へ続く
サイボウズ株式会社様情報
(このたび、青野社長個人より、マタハラNetにスタートアップ資金としてのご寄附をいただきました。誠にありがとうございました。心からの御礼を申し上げ、今後のマタハラNetの飛躍のため、大切に使わせていただきます。この場を借りてお礼申し上げます。)