マタハラは、5人に1人(JILPT調査)の割合で被害経験があるにも関わらず、妊娠中の肉体的精神的に不安定な時期や子育て中の忙しい時期に重なるため、泣き寝入りが多く、表面化しにくい社会課題です。
ここではマタハラNetに寄せられた300件以上のマタハラ事例を分類し、それぞれの被害に対する見解、解決への糸口を提示しています。これらの事例は、日本における女性の就労継続、ひいては日本人の働き方そのものについての問題点を浮き彫りにしています。
マタハラNetでは、様々なマタハラ被害事例を把握することで、マタハラ防止活動や法整備への働きかけに役立てるとともに、多様な人材が活躍しやすい社会の実現をめざしています。
妊娠判明(報告)後
1月末に正社員で仕事がきまり、3ヶ月の試用期間中に妊娠がわかり、上司に妊娠したことを伝え、出産まで働きたいといいました。2週間後に勤務態度が悪いという理由で解雇通知をうけました。上司に両肩を抑えられ解雇通知書に今日中に名前を書いてといわれ、体調がすぐれないし私一人では決められないからサインできないというと、サインしないと帰さないとまた両肩抑えられ入り口もふさがれ、サインせざるをえない状況でした。私は全く納得いかないので労働基準監督署に相談にいき妊娠による不当解雇といわれ、今は監督署のかたに動いていただいてます。
出産までがんばって働いて出産後も働きたいのに、今は悔しいながらも仕事をしていますが、毎日辛いです。
体調が悪い中、「サインしないと帰さない」と言われ、入口もふさがれる中、退職合意書にサインをさせることは、退職の強要に当たるものであり、あなたの意思でサインをしたものではないと判断され、退職合意書は無効となります。
労働基準監督署のかたに動いてもらっているとのことですが、会社が労働基準監督署からの指導に応じず、解決が困難な場合、弁護士に依頼し法的措置(労働審判や訴訟の提起)を検討することとなります。会社からは、退職の強要はしておらず、また、妊娠を理由としたのではなく、勤務態度が悪いことを理由に退職勧奨し、あなたが納得をした上で退職合意書にサインしたと反論があるかもしれません。そのため、退職の強要があったか否かについて、これを裏付ける証拠(同僚の証言や、日々付けている手帳の記載などが証拠となります)を準備できるとよいです。なお、勤務態度不良を理由とした解雇は、非常にハードルが高く、無効と判断されるケースが多いです。(※なお、現在の行政の窓口は、基準監督署ではなく労働局均等部になります。)
医療関係の製造業に勤務しています。入社8年目で、主に営業、営業のないときは製造で、係長として働いていました。
3月に妊娠が分かり、新入社員の入ってくる時期や引継ぎのこともあったので、安定期にも入らず不安がいろいろありましたが、早めに取締役に報告・相談をしました。会社創立以来、初めての産休育休を取得することとなる社員ということ、また後輩にも予備軍がいることから、経営側と良好な関係を保ち、良好な職場環境を構築出来たらとの気持ちも強くありました。
悪阻がひどかったので、早い段階で営業を引き下がりたい旨と、出来る限りの負担を減らしたいと申し出たところ、猛烈に拒否されました。そして半月後、役職手当、資格手当などの削除を通達され、同意を求められました。理由を求めたところ、妊娠を理由としたものではなく、あくまでも私が希望した職務軽減に対する評価であるとのこと。その場では、「お金がほしいのか」「ほかの従業員の迷惑を考えたことがあるのか」「私の友達は妊娠してもずっと営業をしていた」「訴えるなら訴えてみろ、狭い世界だからどうなるかわかるよな」というようなことも言われました。力になってくれる上司もいませんでした。
まだ安定期ではなかったし、万が一おなかの子供に差し障るようなことがあってはとの思いから、産休が取れるだけでもと、周りの意見にも耳を傾け、降格に同意しました。
確かに軽易な業務への転換を希望しましたが、私が受けた不利益が妊娠が理由ではないとは、どうしても腑に落ちません。
妊娠・出産・育休等を理由として、降格といった不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。会社は、あなたが受けた不利益は、あなたが希望した職務軽減に対する評価であることを理由としており、妊娠を理由とするものではないと説明していますが、厚生労働省の通達及びQ&Aでは、妊娠後、1年以内に不利益取扱いを行った場合は、原則として、妊娠を理由として不利益取扱いを行ったものと判断するとしています。そのため、会社の降格が妊娠から1年以内のものであれば、妊娠を理由とした不利益取扱いとして、降格は違法・無効となります(なお、妊娠から1年を超えている場合でも、降格の実施時期が事前に決まっている、または、ある程度定期的になされる人事異動については、妊娠後、最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされれば、妊娠を理由としていると判断されることとなります)。これに対して会社からは、あなたは降格に同意しており、降格は有効であるとの反論がなされることが考えられます。しかしながら、同Q&Aでは、事業主から労働者に適切な説明が行われ、労働者が十分に理解した上で同意をすることが必要とされており、「お金がほしいのか」「ほかの従業員の迷惑を考えたことがあるのか」「私の友達は妊娠してもずっと営業をしていた」「訴えるなら訴えてみろ、狭い世界だからどうなるかわかるよな」などとの説明は、適切な説明に当たりません。したがって、今回のケースでは、降格は違法・無効となると思われますが、詳細については弁護士等の専門家に相談されるのがよいと思います。
今年の5月半ばに産休に入ります。今働いている会社で、10月にリーダーという役職に就いた途端に妊娠が発覚しました。職種は営業です。その後、妊娠は自己都合だと、降格を迫られましたが、この3月まで頑張って実績もあげ、拒んできましたが、4月から期が変わることもあり、「もうリーダーは無理、わかっているよね?」と言われ、有無を言わさず4月から降格することになりました。
今までやってきた実績は無視され、復帰後もリーダーになるには、一から実績を積まないといけません。辞令も書面もなく、このまま主張も出来ず産休に入ってしまいます。正直、一人で主張するのも心が折れるので、勇気も出ません。妊娠しなければ今頃店長にも昇格できていたので、妊娠したことも後悔してしまいます。私が感じていることは、ただのわがままなんでしょうか。自分から言わない限り、このまま役職を降格してしまうしかないんでしょうか。納得するためにはどうしたらいいのでしょうか。
妊娠・出産・育休等を理由として、降格といった不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。そして、厚生労働省の通達及びQ&Aでは、妊娠後、1年以内に不利益取扱いを行った場合は、原則として、妊娠を理由として不利益取扱いを行ったものと判断するとしています。今回のケースは、昨年10月に妊娠発覚、本年4月に降格がなされる予定とのことですが、妊娠後、1年以内に不利益取扱いがなされたものとして、降格は違法・無効となると思われますが、降格が違法・無効とはならない例外的な場合も定められているため、詳しくは弁護士等の専門家に相談されるのがよいと思います。
妊娠6か月、30代女性です。
先日、職場で妊娠のことを話しました。すでに上司には話しており、体調を大変気遣っていただいていました。同僚などに話したところ、後日、私のいないところで、「産休育休って給料もらえるんだよね?いいよね、何にもしなくてももらえるなんて」と何人にも話している同僚がいました。
直属上司及び全体の上司はとても理解のある方で、「頑張ってほしいけど、自分のできる範囲でいいから。出産経験のある事務の人にいろいろ聞いたらいいよ」と正直、びっくりするくらいの理解がありました。その反面、「何もしなくてもお給料もらえていいな」の発言には怒りを通り越して残念でした…。すでにその発言を聞き、2週間が経ちます。時間が解決してくれるかなと思っていたのですが、なかなか・・・。マタハラは、受けてみないとわからない痛みです。
同僚からの「産休育休って給料もらえるんだよね?いいよね、何にもしなくてももらえるなんて」との言葉は、マタニティハラスメントに当たり得るものです。この心ない言葉により、あなたが精神的なダメージを受け、通院を余儀なくされるといった事態に陥った場合は、同僚に対する損害賠償請求や、会社に対する安全配慮義務違反(職場環境配慮義務)を理由とする損害賠償請求を行うことが理論的には可能です。もっとも、現段階では、損害賠償を提訴するまでには至っていないと思われますので、今後、あなたがどのような行動をとるべきかは悩ましいところだと思います。同僚の方から、継続してそのような心無い言葉をかけられるということであれば、まずは、理解のある上司に相談をし、そのような言動はやめてもらうよう、同僚に注意・指導をしていただくのがよいと思います。今後、企業に対してマタハラ防止の措置をとる義務が課される法改正がなされる見込みですので、上司としても、そのような注意・指導をしやすい環境になるものと思われます。
今年4月に入社した会社で、直後に妊娠が判明し、以来、マタハラを受けいます。
妊娠判明と同時に自宅待機を言い渡されました。私としては、健康上に問題はなく、早く仕事を覚えたい思いもあり、職務に就きたいと訴えました。が、受け入れてもらえませんでした。会社の言い分としては、主治医による安全確認できなければ就業させられないというものでした。そこで会社に要求通りに、2度に渡り診断書を提出しました。しかし、妊娠中に提供できる仕事はないと、就業はさせてもらえませんでした。併せてその間に、拷問のような面談を何度も受けました。
「会社の指示(休職したら?辞めたら?)を受け入れない、協調性のない人間」「働きたいと自分の主張ばかりする自分勝手な性格」「みんながあなたを嫌っている」「健常者と同じように働けないなら、会社に必要はない」など、酷いことを繰り返し言われました。
「これ以上会社の指示を受け入れないと、どうなるかわかりますよね」などと、脅迫にも近かったと思います。
面談にて、すぐに復職したい旨伝えました。すると、「あなたの契約は更新しません。短期間しか働けない人間に提供できる仕事はないので、自主退職するように」と言われました。このやりとり以降、会社とは連絡が付きません。会社は職種上、9割女性の企業です。
妊娠・出産・育休等を理由として、自宅待機命令や雇い止め(契約更新の拒否)といった不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。そして、厚生労働省の通達及びQ&Aでは、妊娠後、1年以内に不利益取扱いを行った場合は、原則として、妊娠を理由として不利益取扱いを行ったものと判断するとしています。今回のケースは、妊娠発覚直後に自宅待機命令が出され、また、雇い止めがなされているため、妊娠後、1年以内に不利益取扱いがなされたものとして、自宅待機命令と雇止めは違法・無効となると思われますが、これらの不利益取扱いが違法・無効とはならない例外的な場合も定められているため、詳しくは弁護士等の専門家に相談されるのがよいと思います。
なお、企業による業務命令権の行使としての自宅待機命令は、無条件に行えるものではなく、業務上の必要性が希薄であり、又はその期間が不当に長期にわたる等の場合には、業務命令権の濫用として違法になると解されています。会社は、「主治医による安全確認できなければ就業させられない」とのことであり、これだけでは業務上の必要性は希薄であると言わざるをえません。
育休中・産休中
今年1月に出産しました。しかし、結婚しておらず、彼氏とも別れており一人で育てています。
夏頃に職場復帰する予定で会社ともそう話していたのですが、先日職場に復帰の相談に行ったところ、遠回しに辞めてくれと言われました。子育てと仕事の両立は無理だろうと言われました。
職できる前提で出産しました。復職できないとなると、この先どうなるか分からず不安で眠れません。
会社から、出産を理由に退職勧奨を受けているとのことですが、退職勧奨に応じる必要はありません。退職合意書にサインをするよう迫ってきたとしても、決してサインはしないでください。退職合意書は、あなたの自由な意思に基づいてサインする必要があるため、あなたの意思に反する場合は無効となりますが、裁判でこれを立証しようとすると、退職を強要したことの証拠が必要となるため、ハードルが上がってしまいます。そのため、サインをしないことが一番です。
今後、会社としては、あなたに適した復帰先がないとして、不利益な配置変更や人事考課を行い、または、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為を行うことが想定されますが、そのような行為は、妊娠・出産・育休等を理由とする不利益取扱いとして、男女雇用機会均等法9条に反し違法・無効となり得るものです。このような不利益取扱いを受けた場合は、泣き寝入りせず、弁護士等の専門家にご相談ください。
私はT社の正社員ですが、業務協力員としてC社に勤務していました。昨年妊娠し、妊娠の報告とともに出産後は復帰したい旨を伝えました。T社もC社も出産後の復帰については特に問題ないとのことでした。ただ、私が産休育休で休むとC社で私が行っている業務が滞るので、私の代わりにT社のRさんが業務協力員としてC社で私の業務をすることになり、私は8月に産休に入りました。
その後出産し、育児休業に入ったのですが…今年の3月に3月末でRさんがC社を退職するという話を聞きました。その後Rさんの送別会に出席した際、C社の上司に「あなたの戻る場所はない」と言われました。他にも「早く次の仕事を見つけたほうがいいよ」「〇〇さんならすぐに再就職できるでしょ」とも言われました。
どういうことかまったくわからなかったのですが、4月になりT社から「C社で組織改正があり、Rさんのポジションがなくなることになった。業務協力員の契約は3月末で切れ、Rさんの契約は更新されなかった。〇〇さんの育休明けに〇〇さんとRさんを交代する計画だったが、それもできなくなった」と説明されました。
労働局雇用均等部に相談したところ、「C社とあなたは直接雇用関係がないため、育休法上まったく問題ない。C社とT社が契約を更新しなかっただけ。T社が次の仕事を探してくれるのを待つしかない」と言われました。T社は「今後のことについては今度相談させてほしい」と言いますが、正直退職を勧められそうで怖いです。
①確認すべき点
業務協力員としてC社に勤務中、産休・育休を取得されたとのことですが、あなたがどのような契約形態でC社に勤務していたのかお伺いする必要があります。
まず、あなたは「T社の正社員」とのことですので、C社に出向をしていたという位置づけになると思われますが、その場合、出向元(T社)とあなたの間に、また、出向先(C社)との間に、それぞれ雇用契約が成立することとなります。
もっとも、雇用均等室によれば、「C社とあなたは直接雇用関係がない」とのことですので、これを前提とすれば、C社に対して出向しているという位置づけとはならないと思われます。その場合は、C社に(出向ではなく)派遣されていた可能性が高いですが、派遣社員は正社員ではないため、あなたは「T社の正社員」とは言えないこととなります。
このように、あなたがT社にどのような形態で雇用されているか、また、C社にどのような形態で就労しているかを正確に確認する必要があります。
②今後のアドバイス
T社としては、あなたを育休から復帰させるに当たり、原職又は原職相当職に復帰させる配慮を行うべきということになります(育児・介護休業法22条、同指針)。もっとも、これは企業に対して「配慮」が求められているにすぎず、法的義務ではないため、企業としては必ずしもあなたをC社に復職させる義務はないのが現状です。
そのため、T社としては、あなたの復職先が見つからないとして、退職勧奨を行う可能性があります。もっとも、退職勧奨に応じる義務はありませんので、退職勧奨がエスカレートした場合は、これを止めてもらうよう、外部の弁護士等に相談されるのがよいと思われます。
来年第2子出産予定です。
現在大手上場企業の子会社に在籍しており、専任社員という名の正社員とパートの間の身分です。1年更新の契約です。
一人目の育児休暇と私の契約が11月末までです。その育休中に二人目を妊娠し、6月に会社に報告しました。再度産前休暇取得手続きに本社人事部へ電話したところ、「今年4月に規定が改定され、1年を超えて復帰の見込みがない場合、契約更新しない」と告げられました。私は仕事を続けたくても、もう30週になり中絶はできないし、妊娠しているので就職活動もできない、失業保険ももらえないと必死で抗議して、やっと特別扱いにするといわれ、在籍することができました。
でも、二人目を希望する人は、育休後ちょっと復職し、また育休?ならいいのか、今の会社の規定のままだと、女性職員の年子出産、のみならず二人目出産については考えられていないと思います。やはり会社の都合ばかりな気がします。
親会社は充実した福利厚生のランキングで2位になったこともある上場企業です。でも、社内では「替えはまた採用すればいくらでもいる」という考え方が上層部に定着しています。がっかりです。
この規定改正は少子高齢化・母性保護が言われている昨今の社会問題への取り組みと時代が逆行しているのではないかと、会社に声をあげたほうがいいでしょうか。個人だと言ったとしてもほとんど影響なさそうですが。
妊娠・出産・育休等を理由として、契約更新拒絶といった不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。
あなたの会社には、「1年を超えて復帰の見込みがない場合、契約更新しない」との規定があるとのことですが、育休取得をもって、この規定に該当するものとして契約更新拒絶をすることは、育休を理由として不利益取扱を行ったものとして男女雇用機会均等法9条違反になるものと思われます。
今回、あなたは、「特別扱い」にすると言われたとのことですが、むしろこの扱いは原則の取扱いと言えます。育休取得を理由に契約更新拒絶をされた他の社員がいれば、マタハラNetや弁護士等に相談することをお勧めいたします。
なお、現在、非正規社員の育休取得には、不合理な要件が課されており、育休取得を妨げていましたが、マタハラNetの活動により、今後、不合理な要件が撤廃される予定です。
出産休暇が認められていたにもかかわらず、自宅付近に何度も押しかけて退職強要、転職時の不利をほのめかす脅迫を受けました。血圧が高めだった妊娠中期にも嫌がらせを受け、危険水域の高血圧症を引き起こして緊急入院もしました。なんとか出産しましたが、集中治療室で2週間絶対安静、産後1ヶ月退院できませんでした。会社はそんなことは容赦なく、出産直後に産休をとらせないため慌てて強制解雇しました。
産休を認めると、前提条件として産休明けの職場復帰を認めることになり、その後の短縮労働、その他の優遇措置を疎ましく思い、どうしても阻止したかったのだと思います。
育休中の不尽な解雇を無効だと訴えました。すると会社はずるいことに、解雇の理由は私の能力不足だと詭弁を使い、在職時に問題にしなかった些細な事象やありもしないことを捏造して、小事をあげつらって私を「解雇になっても当然の不良社員」にし立て上げようとしています。現在弁護士に相談していますが、地位保全の申し立てにあまりに時間(半年以上)がかかり、もう生活の破綻が目に見えています。これが会社側の作戦のようでのらりくらりと裁判をやって、私の限られたタイムリミットを待って私が泣き寝入りするのを待っているようです。あまりに理不尽で社会情勢に大きく反するブラック企業です。
妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、事業主が妊娠・出産・育休を取得したことを理由として解雇したものではないことを証明しない限り、男女雇用機会均等法9条3項に反し違法・無効となります。
会社としては、あなたの能力不足を理由とする解雇であり、妊娠・出産・育休を取得したことを理由として解雇したものではないと主張しているとのことですが、そもそも、能力不足による解雇は非常にハードル高いとされています。
弁護士にも相談し、地位保全の申立てを行ったとのことですが、これは、賃金の仮払い命令を得ることにより、生活費を獲得することを目的としてなされたものと思われます。地位保全の手続においては、訴訟よりも迅速に(仮の)判断がなされるのが通常ですが、残念ながら、まだまだ時間がかかるのが現状です。
育児休暇明け10日前に、もとの職場ではなく、通勤時間のかかる職場(ドアツードアで80分ですが、待ち時間や混み具合、間に保育園への送迎もあり、105分以上かかります)に異動を発令されました。
本当は11月が復帰希望だったのですが、保育園の空きがなく4月になってしまい、ちょうど定期人事異動と重なったのが原因で、欠員となった部署に異動ということのようです。通勤時間が1時間45分以内なので、違法な異動ではないということで話もできません。退職勧告や降格ではありません。
結局、保育園の送り迎えや病気になった際、すぐに迎えに行けないので、退職せざるをえなくなりました。復職しようと思っていましたし、そのことを事前に伝えていただけに、ショックが大きいです。
過去の裁判例においては、異動命令に従うことになると、通勤時間が1時間45分を上回り、子供を保育園に預けて継続して勤務することが困難となるため、異動に伴う不利益が大きい旨主張した事案において、①会社が、原告との間で、通勤時間及び保育問題について十分話し合ってできる限りの配慮をしようと考えていたこと、②職場の近辺に転居したとしても、保育園の転園が容易であったこと、③昨今の住宅事情を考慮すれば、1時間45分を上回る通勤時間は、格別異を唱える事由とはいえないこと等を理由として、会社の異動命令を有効としています(東京地判平成5年9月28日労判635号11頁・ケンウッド事件)。
今回のあなたのケースは、③の事情は共通するところだと思いますが、①及び②の事情があるかを確認の上、もし、①会社が十分に話し合わず、何ら配慮を行っておらず、②保育園の転園が困難であるといった事情があれば、異動命令の有効性を争う余地があります。そのため、弁護士等の専門家に相談されるのがよいと思われます。
復職後
産休育休後の職場復帰をしてからというもの、不利益取り扱いや嫌がらせを受けています。
「契約社員は本人の希望があれば、正社員への契約再変更が前提」と書かれているので、保育園が見つかるまでは契約社員になりましたが、その後、希望を申し出ても一向に正社員に戻してくれません。
労働局雇用均等部に助言指導の申し入れ、女性ユニオン東京に加入し、団体交渉・労働委員会へあっせん申し入れ、と話を進めていましたが、会社の不誠実な対応により未だ解決に至っていません。
妊娠・出産・育休等を理由として、正社員から契約社員への労働契約の変更を強要するなどの不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。
会社からは、契約社員への変更を強要してはおらず、合意に基づき変更をしており、不利益取扱いには当たらないとの反論が考えられます。
今回のケースでは、「正社員への契約再変更が前提」という条件で契約社員となったとのことですが、このような契約がどのような状況においてなされたのか、契約書へのサインを強要されたのか、その他の契約書の文言はどのようになっているのか等の事情を確認する必要があります。
労働局雇用均等室に助言指導の申し入れを行い、また、労働組合を通じて団体交渉を行っているとのことですが、会社はこれに一切応じず、話合いでの解決が困難な状況に至っていると思われますので、弁護士に相談の上、裁判所に提訴(通常訴訟、労働審判など)するのがよいと思います。
東京都の職員で2人目の育休を開けて復帰しました。
復職にあたり、短時間勤務をしたいと申し出ましたが、上司にダメだといわれました。
一人目の育休が就職してすぐとなったため、ほぼ新人と同じ扱いです。一人目の育休から復職して、職場になじめず、体調を崩し、しばらく休職し、その間に二人目を妊娠出産しました。そのため、新人のくせに仕事もできないのに短時間で働くことが気に入らないようです。実際、短時間勤務では、仕事内容の都合上、仕事にならないと考えられています。また、他の部署への移動は不可能だということです。
「仕事をすること自体をよく考えた方がいいのではないか」と言われました。
公務員なら出産育児をしながらでも働きやすいと思ったので、就職したのに現状はこのようでした。
仕事をせずに妊娠出産している私が悪いのでしょうか。
東京都の職員には、「地方公務員の育児休業等に関する法律」が適用され、時短勤務については「任命権者の承認」を得ることが必要とされています(同法10条1項)。もっとも、任命権者が独自の判断で好き勝手に承認を行うことは認めておらず、「任命権者は、・・・当該請求をした職員の業務を処理するための措置を講ずることが困難である場合を除き、これを承認しなければならない。」と定められ(同条3項)、すなわち、業務分担の変更、非常勤職員の採用や配置転換等の措置を講ずることが困難である場合を除いては、承認しなければならないとしています。職場の状況にもよると思いますが、東京都という大きな組織で、このような措置を講ずることが困難であるとはなかなか言えないのではないでしょうか。上司が掛け合ってくれないのであれば、更にその上の上司に相談し、それでも解決が困難であれば、東京都における労働基準監督機関としての機能を担っている東京都人事委員会に相談するのがよいと思います。
育休から復帰して一年間頑張っていますが、降格や度重なる退職勧奨を受けています。心が折れて退職を決めてしまいそうです。
仮に辞めるとした場合、会社に自己都合とさせないためにはどうすればいいのでしょうか。
自己都合退職の場合、会社都合退職と比べ、一般的に、失業保険給付に当たって不利に取り扱われることとなります。仮に退職するとした場合、会社に対して会社都合の退職として取り扱うよう交渉をし、退職合意書を締結し、会社都合の退職とする旨の文言を明記してもらうのがよいと思います。会社がこれに応じず、自己都合退職として取り扱われたとしても、失業保険給付の申請に当たり、ハローワークに事情を説明し、資料を提出することにより、自己都合退職であっても「特定受給資格者」として、失業保険の給付に当たり有利に取り扱われる余地があります。
なお、育休から復帰後、降格や度重なる退職勧奨を受けているとのことですが、妊娠・出産・育休等を理由として、会社がこれらの不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となり得るものであるため、退職に応じてしまう前に、一度、弁護士等の専門家にご相談されるのがよいと思います。
地域限定の一般職から、総合職の申請をしました。上司の推薦があれば、総合職には受かると人事から言われていましたが、会社の取締役を含む本部長会議で、子供が小さい(5歳、2歳)という理由で、私だけ落ちてしまい、独身の女性は全て受かりました。言い方が悪いですが、実績は私の方が明らかに上です。過去に異動している方々と比較しても遜色ない経歴です。
出産から時間は経ってますが、これもマタハラの一種なのでしょうか?
妊娠・出産・育休等を理由として、昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うといった不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。
この点、子供が小さいという理由として総合職への異動を認めない取り扱いをすることは、直接的には、妊娠・出産・育休等を理由とした不利益取扱いには当たらないとも思われます。会社としては、「子供が小さい→保育園の送り迎え等で残業ができない、仕事を思い切りできない→仕事に専念できる独身の女性と比べると、会社への貢献度が低い→独身の女性のみ総合職の異動を認めたとしても、能力を適正に評価して判断したものであり適法である」などと主張するものと考えられます。
しかしながら、このような主張を認めるとすれば、小さな子供を持つ女性は、一切、総合職に異動できないこととなってしまい、子供を持つこと、産休をとること、育休をとることに対して萎縮効果が及んでしまい、これは、妊娠・出産・育休等を理由として不利益取扱いを行ったことにほかならないと考えます。出産から時間は経っているものの、争う余地はあると思いますので、一度、弁護士等の専門家にご相談されるのがよいと思います。
1人目出産後、保育園入園と共に仕事復帰しました。お迎えがあるので定時より一時間時短で働くことになっています。今の職場は今年で9年目になります。
仕事復帰後、「子供がいるからいつ休むかわからない」「以前やっていた仕事はほとんど他の人が担当」という理由で、私に任されたのはみんなの補佐のような仕事ばかりでした。最初は仕方ないと思いやっていましたが、時間が余るほどの少ない仕事量…。上司にも言いましたが、とても適当な人で聞いても「そうかぁ」のような解答。他の上司に相談しても、「今は子育てを一所懸命やるときだよ」と何も改善しません。仕方がないので自分の担当以外に、他の方の仕事を見つけ手伝っています。
本当はもっと働きたいです。子供が小さいので転職もできません。すごく辛いです…。
妊娠・出産・育休等を理由として不利益取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法9条に反し違法となります。
ここでいう「不利益取扱い」とは、解雇や降格に限られず、「仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする」ことも該当するとされています(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000130144.pdf)。今回のケースが「仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする」に当たるかは、より詳しい事実関係を伺った上で判断する必要がありますが、意図的に、時間が余るほどの少ない仕事量を担当させることは、「仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする」に当たり得るものであり、許されない不利益取扱いとして、男女雇用機会均等法9条に反し違法となるのではないかと思われます。
その他
人数の少ない会社に勤務しています。そのため上司は、「スタッフが少ないから妊娠は1年待ってほしい」と周囲に公言しています。ただ私は39歳ということもあり妊娠を焦っているのですが、先日妊娠した後輩は「妊娠の計画性がない。できちゃった婚する新人と同じだ」と上司に叱責されていました。
私は管理職という立場でもあります。どうするべきか分かりません。
「スタッフが少ないから妊娠は1年待ってほしい」、「妊娠の計画性がない。できちゃった婚する新人と同じだ」との上司の発言は、マタニティハラスメントに当たり得るものです。このような発言がエスカレートするようであれば、マタハラネットや専門の弁護士にご相談ください。
現在、結婚を控えている会社員(正社員)です。
彼とは子供を持ちたいこと、そして出産後も今の仕事も続けたいことを伝えており、理解を得ています。しかし小企業で働いており、人数ぎりぎりで、現在私の業務を引き継げる人はいません。また就業規則には産休育休制度はあるものの、今まで実績がありません。よって、結婚報告をするのもためらっています。
産休育休制度を利用しやすい方向にもっていくために、結婚報告と同時に子供を産んでも働き続けたいことを伝えるべきか(小企業のため余力がなく前々からの準備が必要)迷っています。結婚は嬉しいのに、その先を考えると不安になります。
産休育休は、法律で認められた権利であるとはいえ、中小企業では人員が限られており、取りずらい環境(取得したいとは言い出せない環境)にあるのが実情です。まずは、相談のしやすい上司に、産休育休を取得したい旨話してみるのがよいと思いますが、今まで実績や前例がないとのことですので、良い反応を示さないかもしれません。そのような場合は、①産休育休中の給与は支払う必要はなく、社会保険料も免除されており、企業に金銭的な負担が生じることはないこと、②育児休業取得者の代替要員を確保し、育児休業が終了した者を原職または原職相当職に復帰させた等の条件を満たした中小企業には、「中小企業両立支援助成金」が支給されることを提案することが考えられます。