妊娠中の体調不良で派遣を打ち切られました。
派遣社員をしています。直接雇用の可能性もあり、長期就業してもらいたいとのことで就職を決めたのですが、その後業務が予定より少なくなり、契約内容を変更して勤務を続けました。その後、妊娠がわかり、就業時間を短縮する措置をとってもらったのですが、結局体調不良で欠勤が続いてしまいました。すると、派遣会社から業務の縮小を理由に契約終了を告げられました。これについて、何か対応を取ることはできますか。
労働者派遣とは、
派遣先と派遣元が派遣契約を締結し、
派遣元が労働者(あなた)を雇用し、
派遣先が労働者(あなた)を指揮命令する
というものです。
派遣契約と雇用契約は別個の契約ですので、派遣契約が解除されたからといって、当然に派遣元から解雇されるものではありません。
派遣元があなたを解雇しているかどうかによって、取りうる対応策が異なりますので、場合分けしてお答えさせていただきます。
【派遣元に解雇されていない場合】
派遣先に対して、理由のない派遣契約の解除を認めないという態度で交渉することになります。
また、派遣元には、派遣先と交渉して契約解除を撤回させるよう要求することになります。
なお、厚労省による「派遣先が講ずべき措置に関する指針」には、「派遣先は、派遣先の帰責事由により派遣契約を中途解除する場合、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図る。これができないと きには、派遣先は、派遣契約の解除を行おうとする日の少なくとも30日前にその旨予告する。その予告を行わない派遣先は、派遣労働者 の少なくとも30日分以上の賃金に相当する損害賠償を行う。予告の日から解除を行おうとする日までの期間が30日に満たない場合は、不足する日数分以上の賃金に相当する損害賠償を行う。」
と定められています。
今回は、あなたの妊娠を理由に派遣契約を解除したのであれば、「派遣先の帰責事由」になりますので、新たな就業機会の確保や、30日前に解除の予告をすることや、その期間を満たさない場合には不足する日数分以上の賃金に相当する損害賠償の請求をすることができます。
派遣先が契約解除撤回を受け入れず、派遣労働者の就労を拒否している場合でも、派遣元に残りの契約期間全部の賃金の支払いを請 求していくことになります。
【派遣元に解雇された場合】
派遣先と派遣元が締結している派遣契約と、派遣元とあなたとの間の雇用契約は、別個の契約ですので、派遣契約が解除されたからといって、派遣元があなたを解雇することはできません。
派遣元とあなたとの間の雇用契約が、有期契約である場合には、労働契約法17条により、契約期間中の解雇は「やむを得ない事由」がなければすることができません。
また、派遣元とあなたとの間の雇用契約が、無期契約である場合には、労働契約法16条により、解雇は社会的に相当と認められる だけの合理的理由が必要です。
派遣契約を解除されたことは、当然に解雇の「やむを得ない事由」や「社会的に相当と認められるだけの合理的理由」とはいえませんので、この点を争うことになります。
以上のとおり、労働者派遣は、複数の契約が存在し、そのうちどの契約が解除されたかによって、また解除理由が何であるかによって、取りうる対応策が異なります。
メールでのご相談ですと、事実関係について不明確なところが残りますので、必ずしも正確なアドバイスができないこともあります。また、労働者派遣については、会社側も強気で対応しますので、ご自分での交渉には限界もあるかと思います。そのため、ぜひ弁護士に直接ご相談されることをお勧めします。
東京法律事務所 弁護士 長谷川悠美