パート労働者です。産休は取れるが育休は取れないと言われました。どうすればいいでしょう?

A:7月より勤務を開始している3ヶ月更新のパート労働者です。

一年の勤務後、ちょうど同じ7月に妊娠がわかり、8~9月ごろに会社に相談しました。
産休は取れるが、育休は取れないとのことでした。
更新は3ヵ月ごと、つど書類を渡され捺印して戻すだけで、面談はこれまで特にありませんでした。
業務内容は期間的なものではなく、恒常的な業務に当たります。

産休明けが4月末ということで、4月の保育園の入園に間に合わず復帰が厳しい状況ですが、復帰できない場合は、契約が終了する旨を通達されました。
契約書には、「契約満了をもって、当然に終了するが更新はできる」と明記されていますが、この場合育休取得条件には 当たるのでしょうか。

区役所の保育課からは(上の子用の勤務証明書が閲覧できるため)会社が違法ではないかと指摘されています。

入園に有利になるように、育休が取れない場合はその理由を公的に示す書類と、復帰できなかった場合どうなってしまうのかが明記された書類を出して欲しいと会社にお願いしましたが、いまだ返事がありません。

しかし、会社に戻ることを考えると派手に戦う気になれず、対応に困っております。


また、この場合時短勤務は法律的には可能になるのでしょうか、それとも時短については会社の規定によるのでしょ うか。
(それによって保育園のチョイスが変わってくるため)

法律的アドバイスをお願いします。
Q: ご質問内容は2つ、1つは育休が取得できるかどうか、2つめは育休を取れるとして、時短勤務が取れるかどうか、という理解で進めます。
●まず1つめですが、念のため、雇用期間が3か月とされる、あなたのような、「期間労働者」に関する「子が1歳に達するまでの育児休業」に関する要件を挙げておきます。
【「期間労働者に関する子が1歳に達するまでの育児休業」に関する要件(育児介護休業法5条1項)】
①   
同一事業者に引き続き1年以上雇用されていること
②   
子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
③   
子の2歳の誕生日の前々日までに、労働契約期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと
あなたの場合、この会社で1年以上雇用されているので、①はOKですね。
②については、契約書の文言は「更新はできる」とされていますから、更新の明示はあるといえます。
しかし、契約期間は3ヶ月ですから、従前と同一期間で更新されても、その更新後の労働契約の期間の末日が、お子さんの1歳の誕生日の前日以前で終わってしまうため、②を満たさず、育児介護休業法5条1項に基づく育児休業は取得できないということになってしまいます。 
もっとも、同条項の要件を満たさずとも育児休業を取得できる場合があります。
それは、「期間の定めのない契約と異ならない状態の期間労働者」といえる場合です。
【育児介護休業法に関する指針】では、
 
  イ.業務内容が恒常的であり契約が更新されていること
  ロ.更新手続きが形式的であること
上記2つの実態がある場合は、裁判例において、無期契約と実質的に異ならない状態と認められていることが多いとされています。
詳細をおうかがいしないと判断できませんが、ご指摘のとおり、業務内容が恒常的、更新手続きについても面談がなく書面上のサインのみで形式的、という実態であれば、こうした意味での育休を取れる可能性があります。
育休が取れるとなれば、産休明けの4月末で終了とするのは許されません。保育課からの、「会社が違法ではないか」との指摘が、どの点をいうのかわかりませんが、専門家の判断を仰いだほうがよいと思われます。
●次に育休が取れた場合の時短についてです。
旧法では、時短すなわち短時間勤務制度は選択的とされ、必須の措置ではありませんでしたが、平成21年改正により、3歳に満たない子を育てる労働者について、労働者が短時間勤務制度を希望した場合、使用者は同制度を「設ける」ことが義務化されています(育児介護休業法23条1項)。
「戻ることを考えると派手に戦う気になれず、対応に困って」おられるとのこと。
弁護士に相談し事を荒立てるべきでない、そうしたお考えの下、相談そのものについても二の足を踏まれ、苦しみながら働いておられる方は、妊婦ならずとも大変多いです。
そのうえ、妊婦の場合は、自分もそうでしたが心身ともに不安定、お腹には赤ちゃんもいますから、幾重にもきつい。これが、マタハラ問題について相談件数そのものが少なく、これまで表に出てこなかった一因でもあるといえます。
相談することと、どうたたかうかは別問題。様々なやり方がありますので、その点も含め、専門の弁護士にご相談ください。
(旬報法律事務所 弁護士 圷由美子)