産休を前に昇給や賞与を与えないというのは、違法性はないのでしょうか?

A:妊娠中、どんなに体調が悪くても、辛いと言うことも出来ず、休むこともしませんでした。
授かり婚だった為、上司に結婚式の招待状を持っていったところ、祝福の言葉は一切無く
「会社の人呼ぶの?全員呼ぶのはやめたら?絶対その方がいいよ。祝辞なんてやりたくないし。」と言われました。
そんな中、12月に賞与と昇給がありました。
ところが、賞与は夏よりも減額(他の社員は増額)。
昇給はあったものの、ほんの少額(同期の5分の1~10分の1程度)で、今までの実績から考えると明らかに不当な昇給でした。
産休を前に、昇給や賞与を与えないというのは、会社側からすると当たり前のことなのでしょうか?違法性はないのでしょうか?
ご返答をお願いします。

Q:今年冬の賞与が夏の賞与より減額されたこと、昇給幅が「ほんの少額」だったことに関するご相談ですね。
まず、賞与については、以下【賞与に関するポイント】をチェックしてみてください。
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【賞与に関するポイント】
1 一般的に、賞与の支給や支給額については使用者の裁量があるとされますが、その裁量の幅は、使用者とあなたとの間の契約の中身によってきます。
2 そこで、契約の中身、ここではボーナスすなわち賞与に関する定めをご確認くださ
い。就業規則、賃金規程、賞与について個別の労働契約を結んでいる方は労働契約書な
どです。
3 2において、支給額そのものが既に約束されている場合(例えば、年俸の内訳としてボーナス分の額が定まっている場合など)や、ボーナスの計算方法が定まっている場合(例えば、例年、月給×1・5か月分としているなど)などは、その額の支給が約束されていますので、それを合理的理由なく減額することは許されません。
4 当該ボーナスの査定対象期間とその期間中休んだ日数をご確認ください。
休んだ日数分につき、例えば、本来賞与額から比例的に減額すること自体は、その間働き続けていた同僚らとのバランスなどの観点から、違法とは言えないでしょう。
違法となるかどうかは、様々な観点からの検討が必要であり、専門の弁護士に相談しましょう。
5 妊娠によってお休みしたとしても、査定期間中就労した日が一定数あり、かつ、職場同僚などにも通常どおり支給されているにもかかわらず、支給額をゼロとするのは、「妊娠を理由とした不利益取扱い」(男女雇用機会均等法9条3項)とみることができ、違法される可能性があります。
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あなたの場合は、体調が悪くても休めなかったのですね。お辛かったですね。
今までと同程度に働いてきたということなら、減額の合理的理由はないということになるでしょう。
率直に、減額の理由を上司に尋ねてみましょう。「祝辞なんてやりたくない」などと本音を言う方ですから、妊娠が理由であるなどと口を滑らせる可能性もあります。尋ねるにあたっては諸々の注意事項がありますので、実際に上司とやり取りする前に、マタハラNetにお声かけいただくか、専門の弁護士にご相談ください。
次に、昇給幅について、同期の5分の1、10分の1ということですね。
昇給も定期昇給などの定めがない限り、使用者の裁量ということになるでしょう。
幅の程度を5分の1、10分の1と表現してくださっていますが、千円単位なのか、万円単位なのか、でも違法性に関する判断は変わってくるでしょう。
「産休を前に、昇給や賞与を与えない」というのは、会社側からすると、当たり前のことか」とのお尋ねですが、マタハラNetにもこうしたご相談が多数寄せられています。
将来休むことを見越して、それを理由に、賞与を与えない、昇給させないというのは
「妊娠を理由とした不利益取扱い」(男女雇用機会均等法9条3項)とみることができ、違法です。
あなたの場合、「会社の業績に景気の影響はない」とされていますが、賞与も昇給もほぼ定額だったということですかね。
そうだとすると、お辛いながらもこれまでと同様に働いてきたにもかかわらずの今回の処遇は、「妊娠を理由とした不利益取扱い」(男女雇用機会均等法9条3項)とみることができそうです。
詳細は専門の弁護士にご相談ください。
(旬報法律事務所 弁護士 圷由美子)