<体験談 なかむらさん 2>自宅療養中に押しかけてくる上司
病院に行くたびに上司に電話で報告をするのですが、最初は「いつごろ復帰が出来そうか」と聞いていた上司の態度がいつからか「もう産休まで休んだらどうか」という方向に変わりました。会社の規定で病気である日数を休んだらその人は欠員扱いとなり、軽い処分を受け、部署には新しい人が配置されるというものがあるのです。
私は仕事に復帰したい気持ちはありましたが、正直残業だらけの部署に戻り、また出血等があったらそのときはすぐに帰れる保証はあるのだろうかと不安でした。ですが、処分を受けるのは嫌だったし、なにより働きたかったので、お医者様が大丈夫といえば、復帰して頑張ろうと思っていました。
そしていよいよ卵巣が小さくなり復帰が決まりました!その際に先生から母性健康管理指導事項連絡カードを書いてもらいました。内容は「残業の制限と通勤緩和の措置について」です。切迫流産をしていることと、貧血、低血圧、仕事のことも相談した結果、先生が「これ(母健カード)を出せば大丈夫」と背中を押してくれたので復帰への意思が固まりました。
ところが、職場にその旨を連絡したところ、制度があることを知らなかったため、私が会社の規定にもこういうものがあって、私はこれを使いたいと説明をしました。すると、なんと次の日に上司が私の自宅までやってきて「部署のためにこのまま休んでいてほしい」と言ってきたのです。
「このままだとうちの職場が年末の繁忙期をこえられない。」
「あなたが復帰してそんな風に働くとほかの誰かが倒れる。」
「みんなが忙しく夜中まで残業しているときにあなたは帰れるんですか?」
「お腹の赤ちゃんのことを考えるともう休んだほうがいいのでは?」
「職場の雰囲気がもう疲弊しきっていていま、ものすごく悪い状態。」
この様なことを言われました。
私も上司が圧力をかけにくることはわかっていたので、一人ではなく親に同席してもらいました(主人は仕事だったので)。案の定親は激怒。
「妊娠したうちの娘はおたくの職場にはいらないっておっしゃるんですか?」
「人が足りないならそこをなんとかマネジメントするのが上司の仕事がないんですか?」
「大体働けるのに休んでくれっておかしいでしょう。」
「子どもを産むって命がけなんです。職場の状況はそっちの理由であって、先生がこの指導事項を守りなさいといっているのが守れないから休んで下さいっておかしいでしょう。」
上司のいうことはよくわかりました。私のせいで同じ職場の人に多大な迷惑がかかっていることもいつも心苦しいと思っていましたし、私のせいでもっとみんなが帰れない、休みが取れないんだと・・・。みんな私と同じように結婚式を控えていたり、子どもが小さかったり、家庭がある人も多いのに、迷惑をかけているだろうと・・・。
定数が決まっているから私が1人いなくなると困るのはわかっていました。それでずっと思い悩んでいて、私もつかれきっていました。ここ数週間、申し訳なさから毎日毎日泣いてばかりで辛くて仕事をやめたいと何度も何度も思っている時期でしたので、「みんなのために私ができることが休み続けることなら、そうしてもいい」と一度は言ってしまいました。
しかし、続けて休むには病院の先生の診断書が必要なため、すぐには決まりません。結局上司は4時間ほど滞在した後、なんの進展もなく「また連絡する」といって帰っていきました。
心から悔しいと思いました。頑張って働いて、頑張りが認められて今の部署に異動したのに妊娠して残業が出来ないとわかるとこんなにも不利益を被る理不尽なことをいわれるこの日本の社会全体が嫌いになりました。妊婦を守るための法律や制度がたくさんあるのは知っているけど、それを使えないのなら意味がない、と強く思いました。
私を犠牲にしないといまの部署がつぶれそうなのもわかってしまう。こんな想いをするくらいならずっと専業主婦でのんびり子どもと平穏無事に贅沢せずに暮らしていくほうが何倍も幸せだと。
ですが、せっかく入社した会社をこんな理不尽なことで辞めたくない!私は働けるのに!!と思い、頑張らないと!と行動を始めました。