<体験談 Fさん 7>いまも蘇る記憶と悔しさ、辛さ

その後、引っ越しをしてA県での生活が始まりました。

3年後に2人目の子どもを妊娠しましたが、また妊娠出産により仕事がどうなるかわからない、という不安や怖れはありました。そして最初に相談した上司に、今は良い時期かどうかわからない、経営陣の女性への風当たりは基本的に良くはないと釘も刺されました。

しかし、その時は周囲の理解と協力もあり、産前産後1ヶ月程の産休を取って元の授業に戻ることができました。休職期間の給料はゼロなのではと思っていましたが、年間契約という形になっていたため通常通り支払われ、ほっとしました。

授乳に関しても、新年度からは連続の授業にならないよう工夫してもらい、パートナーには子どもを連れて職場の近くまで一緒に来て貰い、授乳をしました。狭い車中ではあっても大体3時間の間隔で授乳を続けられたのは、有り難いことでした。

私たちは両親とも遠く離れて住んでいることもあり、育児等に関する協力もあてにできません。そんな中でも、パートナーが主に子どもの面倒を見るという形を取って最大限に協力してくれているため、今の形態で仕事をしていられる状態です。

しかし、そういった血縁の有無に左右されず、女性であるとないとに関わらず、自分で生計を立て、暮らして行ける仕事を持ち、同居人、パートナーや子どもとの関係性、衣食住を大事にした生活をしていけることは、基本的な人権として尊重されるべきことだと思います。

2人目の時は産前産後1ヶ月で完全に元の仕事に戻り、または治療院も同時期に復帰したのは、学生のことや同僚、患者さんへの負担を考えた上での選択でした。しかし、産後の身体が元に戻るには本来はまだ時間が必要だと思いますし、産後間もない乳飲み子を抱えて仕事をするのは、想像以上に大変な努力が必要です。初産であれば、尚更です。

もしもう1人できたら、正直なところせめて1年くらいは育児休暇を取ってみたいと思うのですが、やはり難しいかもしれません。

ところで福祉の充実した北欧の国では、女性も男性も出産後育児休暇を有給で取れると聞いたことがあります。そこで調べてみると、なんと内閣府の「仕事と生活の調和推進室」という所が出している5年前の「カエル! ジャパン通信 Vol.8」(2010年5月31日 発行)に詳しく載っていました。

テーマは、『北欧諸国のワーク・ライフ・バランス』で、女性の社会進出が進んでいること、男性の育児休業取得率が9割近くにのぼること、もちろん有給で、子が18ヶ月に達するまでは完全両親休暇(全日休暇)の休業取得可能期間があり、子の8歳の誕生日までは分割して工夫して取れることなど、日本社会の現状からすると夢のような手厚い制度だと思います。

ますます少子化が進む日本社会において、女性も男性も安定した仕事に就けること、仕事をしていても安心して妊娠出産できること、男性も含め育児に安心して主体的に関われることは、欠かせない社会環境ではないでしょうか。それには、雇用主も労働者もマタニティハラスメントに対する意識を持ち、違反した場合のきちんとした罰則を設ける。そして妊娠出産育児を経済的に保障する福祉の体制の整備が必要だと思います。

きっと今この時も、マタニティハラスメントを受け、思い悩んでいる人が沢山います。せっかく授かった貴重な生命、また女性自身の才能や健康、経歴を損なうことのない社会環境を早期に実現するべきです。

私の体験談は、もう10年以上前の話です。それでも昨日のことのように蘇る記憶と悔しさや辛さは言い表すことができません。この体験談を書くに当たっても、何度も胸が塞がる思いをして筆が進みませんでした。

そして10年以上経っていても、同じような目に遭う人が後をたたないのが酷い現実です。

マタニティハラスメントに遭った人が、1人で悩まず背負い込まずに、解決への糸口を少しでも早く見つけられますように。また1日も早く周囲の理解が進み、困っている時はお互い助けられる関係性が築ける社会になることを願っています。

女性ユニオン東京も、そのお手伝いができると思いますので、困ったことがあったら是非相談に行ってみて下さい。

(おわり)
ペンネーム:Fさん
対処方法:労働組合に相談 労政事務所(労働相談センター)に相談