<体験談 やすさん 11>「ハラスメントなどと言うなら、お前の面倒は見られないと人事に言うぞ!」

もう無理だと、辞めたいと思いました。こんな会社では、こんな上司の元ではとても働けない。体調不良と称して2日間休みましたが、本当にショックで、全く眠れませんでした。

「お前が流産するから悪いんだろ」、「流産するのは、お前が悪いからだ」、どちらも一緒。

これ以上ないというくらい、深く傷付く言葉でした。最初は傷付いていましたが、2日目も終わりになると、そのうち悔しくてたまらなくなってきました。妊娠しただけで、なぜこんな目に遭わなくてはならないのでしょうか。普通に働き続けたいだけなのに…。
すると主人がこんな記事があるよ、と、週間ダイヤモンドの電子記事を見つけてくれました。(「セクハラより多い“マタハラ” 職場の妊婦への無理解が流産招き少子化解消を阻む」http://diamond.jp/articles/-/36364)働く女性の流産・死産の背景には、マタニティハラスメントがあるという記事でした。
まさに私のことだと思いました。この時初めて、“マタニティハラスメント”という言葉を知ったのです。
私が上司たちにされていることは、確実にこのマタニティハラスメント。(もしこの記事を読まなければ、自分が上司たちからされていることが何なのか認識できないままだったでしょう。)私は上司Aに「あなたのやっていることは、ハラスメントです。止めてください。」と伝える決意をしました。そんなことを言えば、また傷付く言葉で怒鳴られるだろうと怖かったですが、勇気を奮い起こしました。
2日間休んで出社したその日、私は上司Aにこの記事のURLを添付してメールを送りました。
怒りはひた隠し、丁寧な言葉で、「もっと話し合いや歩み寄りをできる関係を築きたいです。世の中でこういうことが起きているので、一度読んでみてください(記事URL添付)」と。
しばらく経ってから、上司Aに会議室に呼ばれました。「こんなことするなら、お前の面倒はみられないと人事に言うぞ」と脅されました。そして、「心配でお前の自宅まで行ってアドバイスしたのに、それに対して感謝こそすれ、ハラスメントなどと言うのは何事だ!」と言います。
自分の退職勧告を良い事をしたと思っていることに、驚愕しました。価値観の隔たりがあまりに大きいことに唖然としました。
私が「お前が流産するから悪いという言葉は、あまりに酷いのではないですか?」と言うと、上司Aは「そんなことは言っていない」と否定し、この発言を認めることはありませんでした。
これ以上言い争っても仕方がないと思い、「私は上司Aの下で働きたいんです。他の部署なんて考えられません。ずっと上司Aの元で働かせて欲しいです。だから、ただ理解して欲しいだけなんです」と、下手に出て自分でこの場を終わらせることにしました。
するとその日の仕事終わりに、上司Aから突然飲みに誘われました。飲みの席で上司Aはほんの一言、「ごめんね」とだけ言いました。
すべてを理解した上で言った言葉ではなく、その場を取り繕うために言った言葉でした。飲んで機嫌が良くなったから、言ったに過ぎないことも分かっていました。
しかし「もうこれで収めよう」と思いました。

これでやっとマタニティハラスメントは終わったと、この時はそう思いました。

(つづく)

ペンネーム:やすさん

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