<体験談 やすさん 03>「あと2~3年は、妊娠なんて考えなくていいんじゃないの?」
何か別の病名を言いたい、嘘をつきたいと思いましたが、当然診断書を提出しなくてはいけないため、嘘をつくわけにはいきません。「流産しました」という報告をするのは、ものすごく嫌でした。できることなら誰にも知られず、夫と家族の間だけの秘密にしておきたかった。けれど、もうこんな経験をするのは二度と嫌でした。今後こんなことにならないよう、上司にお願いをしなければなりません。そのためにも、流産のことを話すしかありませんでした。
ここは、次なる妊娠を絶対に失敗しないためにも、包み隠さず話をして協力してもらうしかない。私はそう決意し、気持ちを整理して、当時の上司Aと二人だけで話をすることにしました。打ち合わせが終わったあと、「ちょっといいですか」と時間をもらいました。
私:「ご迷惑お掛けしてすみませんでした。」
上司A:「あれでしょ?働き過ぎで、過労かなんか?」
私:「いえ、…あの…、実は…私、妊娠してたんです。で、流産してしまいまして…。」
上司A:「…。」
私:「それで、もうこんなことは二度と嫌なので、アシスタントをつけてもらえませんか?」
上司A:「…。」
私:「新卒の子とかでもいいんです。このプロジェクトは学べることがたくさんあります。私も、教えられますし。」
上司A:「…。」
私:「派遣さんとか、アルバイトの子でもいいです。とにかく私と一緒に動ける人が欲しいんです。情報共有ができる人が必要なんです。」
上司A:「あと2~3年は、妊娠なんて考えなくていいんじゃないの?」
私:「…。」
上司A:「今は仕事が忙しいんだし…。」
私は強いショックを受けました。流産に対するいたわりの言葉をかけるどころか、仕事を優先して妊娠は後回しにと言ったのです。当時35歳を過ぎていた私にとって、2~3年後、40歳前で初めて妊娠を計画するということはリスクが高いと思えました。
しかし、このようなやりとりは序の口に過ぎませんでした。この日から私のマタハラとの戦いが幕を開けることになったのです。
私はあっけに取られてその場から動くことができませんでした。パーテーションのみで仕切られた隣の会議室からは、別の打ち合わせの声がガヤガヤと聞こえてきます。納得のいかないまま、その話は終わっていました。