<体験談 やすさん 18> 労働審判

担当の弁護士先生は、私の事例はかなり酷いケースで悪質極まりなく、1つ1つの事実を会社に認定させるためには、本訴の方がいいかもしれないとアドバイスをくれました。
私は、会社に事実を認めさせたいものの、妊娠を希望しているため、何年も裁判で争うことは避け、できるだけ早期解決したいと考えていました。また、本訴となれば企業名が公表されることになり、それは今も会社で働く同僚に不安を与えることになるだろうとも考えました。
まずは労働審判をやって、ダメなら本訴にと、段階を踏もうと決めました。

カルテのコピーを病院から取り寄せたり、録音データを書き起こしたり、弁護士先生と数回打ち合わせたりと、労働審判の申立書を作成するのに約3ヶ月。裁判所に申請をしてから、3回の期日を終えて解決にまで約3ヶ月といった流れで労働審判は行われました。

労働審判を起こされたら、会社は無傷では帰れないと言われています。通常、企業はそのような知識があるはずなので、労働審判を起こされないよう人事で食い止めなければならないのですが、そういった知識のない会社もあるようです。
私は録音データや書面など確実なる証拠があったので負ける気はしませんでしたが、会社が出してきた答弁書は、証拠がないところはそんな事実はなかったと否定し、証拠があるところに関してはそんな意図ではなかったと否定して来るものでした。会社、組織としては、なかなか認めることは出来ないのでしょう。
労働審判は1回目の期日で、審判官の心証はほぼ決まると言われています。私の労働審判は、私の要求がほぼすべて盛り込まれた調停案で解決することができました。
自分の人生の中で、弁護士先生や裁判所と関わることが起こるとは思ってもみませんでしたが、私は労働審判をやってよかったと思っています。
会社には、今後このようなことがないよう、しっかりと法令を遵守してもらいたい、「知らなかったから…」などというもっとも低レベルな要因でマタニティハラスメントが起こらないよう、マネジメント層に対し、まずは法律の知識をきちんと指導し、知識不足による安易な行動は未然に防ぐよう努めてもらいたいと願います。
第二第三の私のような被害者が出ないことを本当に願ってます。

(おわり)

ペンネーム:やすさん

対処方法:社内相談窓口の利用 労働局雇用均等室への相談 弁護士への相談・依頼 労働審判

「労働審判判制度」とは,個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を、裁判所において、原則として3回以内の期日で、迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度です。裁判官である労働審判官1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が審理し、適宜調停を試み,調停がまとまらなければ、事案の実情に応じた解決をするための判断(労働審判)をします。労働審判に対する異議申立てがあれば、訴訟(本裁判・本訴)に移行します。