<体験談 やすさん 02>双子ちゃん、流産
週末、病院に行くと「心拍が見える」と医師から言われ、エコー写真を見たときは、さすがに目頭が熱くなって感動しました。医師に「なんか下腹部が少しだけ張っている気がするんですけど」と聞くと、「妊娠初期は、子宮が大きくなるから、そういう違和感は誰にでもあるんだよ」と言われ、そういうものかとその時は思いました。
「来週も仕事忙しいから、ママと一緒に頑張ろうね。」
お腹に手を当てて話しかけたりすると、なんとも不思議な気持ちになるものです。自分の経験したことがない未来が、これからやってくるんだと思っていました。
通勤のときだけ、カバンにマタニティマークのキーホルダーを付けて、会社に入る前にカバンの中に隠す。普通に何事もないように、遅くまで働く日々でした。「何かお腹が張る気がするけれど、仕事は山を越えるし、そこまでは無理してでも頑張ろう」と思うのだけど、何かお腹がおかしい。
病院で妊娠を確認してから、3~4日後の朝、普通に出勤しようとしても、下腹部の鈍痛があり、横になった状態からなかなか起き上がれないことがありました。夫にお腹をさすってもらっても、どうも苦しい。病院の先生は「初期は張る」って言ってたけど、妊娠ってこんなに痛いの?苦しみにうめきながらも、頭の中は仕事のことでいっぱいです。
「データの修正を確認しなきゃ!私しかあの業務分からない。」
下腹部の鈍痛には波がありました。ずっと痛いわけではなく、しばらく経つと楽になり、またしばらく経つと痛むというように。楽になったタイミングを見計らって出勤しました。
これ見よがしにマタニティマークのキーホルダーを見せ付けても、誰も席を譲ってはくれない。マタニティマークのキーホルダーが無力なことを思い知る。毎日そうでした。
定時より遅れてしまったけれど、なんとか出勤。午前中にやらなければならない業務をひたすらこなし、なんとか仕事の山は越えたと思えた午後、痛みは息を呑むほどの激痛に。
これは明らかにおかしいと感じ、身体を引きずるようにしてなんとか会社近くの産婦人科に駆け込みました。内診の際、カーテンの向こうで医師が看護婦さんに、こそこそと私には聞こえない声で話をしていて、何なのかとても気になっていました。
すると、医師から「双子ちゃんだよ」と告げられ、私はとても驚き思わず声を出していました。「初診で妊娠の確認をしたときは、そんなことは言われませんでした」と医師に伝えると、「きっと見落としたんだよ」とのこと。
医師は続けました。
「けど、心拍見えないなぁ~。2つ袋があって、1つは中身があるけど、1つは中身が何もなさそうで、こっちの中身がない子がどうなるか分からないから、下腹部が張るんだよ。仕事なんてしている場合じゃないよ。安静にしなきゃ。」
なんとか仕事の山は越えたので、この日は早退。帰りの電車も、鈍痛で痛む下腹部を抱え、自宅に辿り着きました。翌日からは自宅安静。翌日、翌々日とだんだん痛みはなくなっていったのだけど、1週間後に流産が確定しました。
あの激痛は赤ちゃんの心拍が消えるときの断末魔だったのだと思います。なんてことを私はしてしまったのだと、ただただ呆然としていました。
妊娠7週目。稽留流産とのことで手術。手術の前日、パイプ?のようなものを入れられるのですが、これが串刺しにされるように強い痛みを伴います。出産と違い生産性のない、ただ悲しいだけの手術が私を待っていました。
ペンネーム:やすさん
対処方法:社内相談窓口の利用 労働局雇用均等室への相談 弁護士への相談・依頼 労働審判