<体験談 やすさん 06>切迫流産中に4時間におよぶ退職勧告 ※働きながらお母さんになるあなたへパンフレット

17時くらいでしょうか、契約更新について話があるとのことで、上司であるA部長が自宅にやって来ました。退職勧告をされる予感がしていたので、主人にも同席してもらいました。切迫流産中に契約更新の話をしに上司が自宅にやって来るというのは大きなストレスでした。

上司Aは、
「契約社員は時短勤務ができない。」
「時短勤務ができない訳だから、どうしても仕事したい場合はアルバイトで来るしかないんじゃないの。フルで来ちゃダメでしょ。」
「契約社員のあれ(就業規則)に、時短勤務とかさ、フレックス適用とか、あぁいうものがあるんだったらいいけど、そうでないとしたら、俺だったら最低でもアルバイトに切り替えるよ。俺だったら切り替えて、いつだって契約社員とか、契約社員どころじゃなくてお前は正社員で受けてもいいくらいだからさ。」
「ごめん。また大きい声出して、いつもこんな調子で。」
と自分でも言うくらい、時には大きな声で退職するよう迫りました。

上司Aは「休んで会社に復帰したとしようよ、会社にいいイメージが残ると思う。お前。次の更新の時とかに。それが人事側からしてみれば、それが周りへの影響、迷惑だと思う。恐らく。評点で。」
「(お前は仕事が)出来るわけ、なのに会社にわざわざ悪いイメージ与えて、会社からしてみると人事は我侭だと、周りの仲間とか同僚のことも考えてみろと、少なくとも気を使うわけじゃん。まずは俺が気を使うもん。」
などと繰り返し、途中から、
「あの、すみません、この家にお酒ないの?」
と言って酒まで飲んでいく始末。
ケーキと紅茶を出していましたが、まさか夕飯時を過ぎても話をすることになるとは思っておらず、寿司の出前まで取ることになりました。今振り返ると、上司をもてなすようなことをしていた自分をバカみたいに思いますが、このときは、なんとしてでも仕事を継続したいと思っており、上司の機嫌を取るしかなかったのです。

私は仕事を継続したいと何度も訴えましたが、上司は酒を飲みながら退職を勧め続けていました。
上司A:「たとえば会社に特例があってね、特例があって、契約社員でも時短勤務が可能というのでもあればいいけど、間違いなくないから。これは。ないってなると、普通にあなたは毎日来れますね。で、もし、万が一何かあった場合は自己責任ですよ。」
「お前は、1年後だろうが2年後だろうが、いつでも今までの仕事のパフォーマンスで十二分に、俺は(お前に)最高の点数(評価)を付けたって言ってるわけでしょ。最高の。…それだけ、優秀で仕事ができる人が、…子ども産まれたんで元気で仕事出来ますってさ、(会社は)優秀な人だから、是非仕事をしてくれとまた、その方が、その方が、むしろだからその時は正社員で受けることも可能かもしれない。」

上司Aは一旦会社を辞めて、出産してからまた正社員で会社に戻ってくればいいと言います。保育園の待機児童の問題を何も分かっていなかったのではないでしょうか。あまりその手のニュースには興味がなかったのでしょう。一度仕事を辞めたら、保育園に入園させることが出来ず、復帰なんて出来るわけがありません。現実を何も分かっていないのだと私は愕然としました。

上司A:「また何か(妊娠)があって、穴空けられたり、現に今回も迷惑掛けていることは掛けているわけよ。実際に。」
「周りの影響を考えると、今の(雑誌の)仕事はやらせられないので…。」
私:「周りの影響っていう話でいうと、私は何回もアラートは出させていただいてて。フォローに付く人が欲しいって話は、ずっとしてたじゃないですか。」
上司A:「それもね、それも、会社はどう解釈するか。ただ、ドライな方向で話をもって行くと、彼らももっとドライにしかならないし。特に人事。」

私は散々この上司Aに「情報共有をして欲しい。私と一緒に動けるアシスタントが欲しい。」と訴えて来ました。それを実行しようとしなかった自分のマネジメントを棚に上げ、人事部に責任を転嫁しようとしているように聞こえました。私のプロジェクトに関してはマネジメントするという意識があまりないたのではないかと思いました。

上司A:「会社に時短勤務の制度が、契約社員に対して、制度がないことは違法ではないわけだからさ。」
「せっかく今いい評価をもらっているし、仕事も出来ているし、…わざわざ自分でマイナスイメージをさ、これマイナスイメージっていうのが、君からしたら何でマイナスイメージを抱くんですか?って、でも彼ら(会社、人事)からしてみれば、マイナスイメージを抱くことがイリーガルでも何でもないんだもん、言っている意味分かる?」

上司Aがあまりに理不尽なことを言い続けるので、私は、区役所で母子手帳をもらう時に一緒にもらった厚生労働省雇用均等室・児童家庭局の「働きながらお母さんになるあなたへ」のパンフレットを上司Aに見せました。ページを開き「このような退職勧告は法律で禁止されているんですよ」と説明してみましたが、法律の知識がないためか上司Aには、不法行為の意識はまるでありませんでした。

「迷惑」「悪いイメージ」「我侭」「気を使う」…。切迫流産の状態でお腹の赤ちゃんがどうなるか分からない中、傷付けられる言葉の数々。そしてさらに、妊娠をとるなら、仕事は選択しないように追い込まれるのです。なぜ妊娠したというだけで、こんな目に遭わなければならないのだろうかと、ものすごく苦しかったです。

契約社員であろうが、育児・介護休業規程上に時短勤務は認められています。また、社内の子育て中の契約社員数名は、実際に時短勤務で働いています。上司Aの退職勧告は、そのようなことを全く認識していない、知識不足から来る、自分の価値観の一方的押し付けでした。

21時過ぎ。上司Aが自宅玄関口で、「明日は契約更新しないって言ってきてね」と私に告げ、ほろ酔い加減で帰っていったあと、主人が「今の録音しておいたから」と言いました。「なんで?」と私が聞くと、「あまりに言っていることがおかしいから」とのこと。この主人のファインプレーに私は助けられることになるのです。

(※会話は録音より起こしたものです。)

(つづく)

ペンネーム:やすさん
対処方法:社内相談窓口の利用 労働局雇用均等室への相談 弁護士への相談・依頼 労働審判